「私の兄に、なってください」
父が倒れた武家娘からの唐突な願い。
家督を狙う叔父の魔の手を撥(は)ね除(の)ける!
平八郎、萬(よろず)稼業人助け。
素浪人・矢吹平八郎(やぶきへいはちろう)は、憮然(ぶぜん)としていた。口入屋の万吉(まんきち)に呼び出されたのだが、何の説明もなく、武家娘に品定めされているのだ。どんなに割の良い仕事でも断ってやる……。そう決意した矢先、娘は平伏し、「矢吹さま、暫(しばら)くの間、私の兄になっては戴(いただ)けませぬでしょうか」と懇願(こんがん)した。こうして始まった平八郎の俄(にわか)兄妹芝居。家督をめぐる策謀に、平八郎が立ち向かう!