市兵衛の、優しさ強さが心に沁みる!
好きで逢えない、暮らせない。
母に先立たれ水茶屋で働く娘には、新しい命が宿っていた。
寄辺(よるべ)のない彼女には、行方知れずの父がいた……。
廃業した元関脇がひっそりと江戸に戻ってきた。かつて土俵の鬼と呼ばれ、大関昇進を目前にした人気者だったが、やくざとの喧嘩(けんか)のとばっちりで江戸払いとされたのだ。15年後、離ればなれとなっていた妻や娘に会いに来たのだった。一方、“算盤(そろばん)侍”唐木市兵衛(からきいちべえ)は、御徒組(おかちぐみ)旗本のお勝手たてなおしを依頼された。主(あるじ)は借金に対して、自分の都合ばかりをまくしたてるが……。