粋(いき)で温かな女主人の励ましが
明日と向き合う勇気にかわる。
家を捨てた息子を案ずる、余命幾ばくもない父……。
日々堂(にちにちどう)のお葉(よう)の元に山源(やまげん)の総元締(そうもとじめ)源伍(げんご)から文(ふみ)が届いた。だが、筆蹟があまりにも弱々しく、女(おな)ごの手になる文にみえる。いぶかるお葉は思い切って山源を訪ね、驚愕(きょうがく)した。源伍は口も回らない状態で臥(ふ)していたのだ。さらに縋(すが)りつくような目をお葉に向けて言葉を吐いた。家を飛び出したきりの息子源一郎(げんいちろう)を捜して欲しい、と(「花卯木(はなうつぎ)」)――江戸に涙と粋(いき)の花を咲かす哀愁情話。