愛する人はどこへ消えた
父のたくらみか、自らの意志か――。
大店の倅(せがれ)が辿る、
茨(いばら)の道とは?
周次郎(しゅうじろう)の女房のおきみが失踪した。実家の大店(おおだな)の質屋『甲州屋(こうしゅうや)』の差金(さしがね)だと考えた周次郎は、亡父の今際(いまわ)の際(きわ)の言葉を手がかりに、甲府(こうふ)へ女房捜しに向かう。だが、旅の途中、謎の刺客(しかく)に襲われる。一方、悪質な金貸し妹尾別当(せおべっとう)を探る青柳剣一郎(あおやぎけんいちろう)は、妹尾と『甲州屋』の関係を語る家訓に違和感を覚えていた。やがて江戸で起きた破落戸(ごろつき)の連続殺しが、新たな事件の始まりとなる。