娘のため、殺された知己(ちき)のため、
惣三郎(そうざぶろう)は悩み、戦う
いくつになっても父は父
しのは芝(しば)の町内を眺(なが)め回した。
惣三郎(そうざぶろう)が命を張り、一家が危険に晒(さら)されながらも守ってきた暮らしがここにあった。
冠阿弥(かんあみ)の厚意で借り受ける長屋、そして、それを支える町内の人々、これが五十路(いそじ)を過ぎた惣三郎とその一家が勝ち得た暮らしだった。しのは大きな家も要らなければ、豪奢(ごうしゃ)な暮らしも望んではいなかった。(本文より)
1年に及ぶ柳生逗留(やぎゅうとうりゅう)を終え、惣三郎(そうざぶろう)と結衣(ゆい)が江戸に帰ってきた。しのと結衣は抱き合って再会を喜ぶ。惣三郎は皆に飛鳥山(あすかやま)菊屋敷での静養を薦(すす)められ、すぐにも精出して働きたいと渋るが、人々の厚意を受けることにした。息子や娘、弟子の成長を見るにつけ、自らの老後に想いを馳(は)せる惣三郎。そんな折、近隣の「烏鷺荘(うろそう)」に引っ越してきた老人が、惣三郎を囲碁(いご)に誘うが……。