五十がらみ、剛剣の初老
憂(うれ)いを含んだ若き色男
そして、紅一点の変装名人
忍び三人、仇討(あだう)ち道中
父を亡くした二人の少年剣士に助勢せよ!
迅(はや)い! 泉十郎(せんじゅうろう)は目を剥(む)いた。初太刀から連続して真っ向へ斬り込む二の太刀が、まるで一度の斬り込みのように迅かった。この太刀で、西崎(にしざき)どのは斬られたのだ! 二月(ふたつき)ほど前、駿河国(するがのくに)奥江藩(おくえはん)の勘定(かんじょう)奉行西崎が殺された。心形刀流(しんぎょうとうりゅう)の遣(つか)い手向井(むかい)泉十郎、居合一閃(いっせん)の植女京之助(うえめきょうのすけ)、変化(へんげ)のおゆらの三人衆は、年端(としは)もいかぬ西崎の倅(せがれ)二人の敵討(かたきう)ちを助け、江戸から東海道を往(ゆ)く。