母を捜す少年の冷え切った心を
温かい料理が包み込む
縄のれんをひとりで切り盛りする女将・お園の料理が、
季節と共に江戸を彩る人情時代。
日本橋小舟町(にほんばしこぶなちょう)〈福寿(ふくじゅ)〉の料理は人を元気づけると評判だ。その店を10歳の少年連太郎(れんたろう)と下男勘助(かんすけ)が訪れた。女将(おかみ)のお園(その)が出した“親子飯”と“親子雑煮(ぞうに)”に感激し、二人は事情を語り出す。父の乱心によるお家取り潰しで、一家離散となった連太郎。江戸で見かけられた生みの母を捜しに信州(しんしゅう)の養家から出てきたという――。健気(けなげ)に悩み惑(まど)う少年を、お園の温かな料理が導いていく。