若き剣術家に新たな才を
見出した惣三郎(そうざぶろう)は……
愛情か、非情か――
立ちはだかる父
「昇平(しょうへい)、住職の前でおめえに言い聞かせることがある」
「へえっ」
「おめえが墓の前で一人だけ生き残ったことを
後悔するのは今日が最後だ。
おめえにはもうみわ様という新しい家族があらあ。
この次、おめえが涙を流すのは、新しい家族のためだ」(中略)
辰吉(たつきち)の情を尽くした叱声(しっせい)に昇平の背筋が伸びた。
(本文より)
上覧剣術大試合開催を知るや、佐渡(さど)を出立(しゅったつ)して越後(えちご)に修行の場を移した清之助(せいのすけ)は、長岡(ながおか)へ向かう途次(みちすがら)、討手(うつて)に追われる姉弟(きょうだい)と出会う。彼女らは村上藩(むらかみはん)の内紛を報(しら)せる密書を父に託され、江戸に向かう道中だという。次々に押し寄せる刺客(しかく)を迎(むか)え撃(う)った清之助は、姉弟を江戸に送り届けるべく、策を巡(めぐ)らす。その春、江戸では惣三郎(そうざぶろう)の驚くべき宣言が、一同を当惑(とうわく)させていた!