ありがとう。
さようなら。
一瞬見えたあの男は、失踪した亭主なのか。
その姿を追って、お園は、旅に出る。
お園(その)は芋を剥(む)き、鮎(あゆ)を捌(さば)く。あの人を思って――。夜道を襲われたお園を助けに現われた男が落とした紙片。そこには謎の食材が書かれていた。それが元夫・清次(せいじ)との思い出に符合すると気づいたお園は、矢も楯(たて)もたまらず旅に出る。食材に導かれるように、旅の途上で邂逅(かいこう)する清次とその父の過去。やがて意外な形で旅が終わり……。健気(けなげ)なお園の姿が胸を打つ江戸料理帖。