菓子処(かしどころ)の看板娘が
瓦版(かわらばん)記者に!?
無類の菓子好き!
読売書き見習いお吉(きち)の
出会いと成長の物語!
「おめぇ、読売(よみうり)屋で働く気はねぇか」
読売? 女の書き手? あっけにとられて、思わず顔をあげた。
「あ、あたしは、菓子処の女中でございます。
読売を書くなんて、そんな途方もないこと……」
「だが、おめえには書きたいことがある。
それは書き手にとって一等大切なことだ。
やってみねぇか」(本文より抜粋)
両親の死後、女手ひとつで妹弟を育てた25歳のお吉は、とびきり甘味好き。働いていた菓子処が暖簾(のれん)を下ろすと、ひょんなことから、読売書き見習いに。人気者のお気に入りの菓子を紹介するため、歌舞伎役者の市川團十郎(いちかわだんじゅうろう)と尾上菊五郎(おのえきくごろう)に初取材すると、團十郎の亡き父との思い出の一品を捜すことに――。健気(けなげ)なお吉とほっこり甘い菓子が、心をときほぐす人情帖開幕。