福寿に危機が!
包丁に祈りを捧げ、料理に心を籠める
客を癒すため、女将は今日も、板場に立つ。
温かい江戸人情料理帖、本日も開店。
お園(その)が、江戸に帰ってきた。だがその矢先、お園を待っていたのは、店の危機だった。近所にできた京料理屋〈山源(やまげん)〉に、留守(るす)にしている間に客を根こそぎとられてしまったのだ。しかも〈山源〉の板長・勘市(かんいち)は、「お客の心を癒(いや)すための料理」というお園の考えを強く否定した。だが、信念を曲げないお園は、お客と自らをも救う一品を作り出す。優しさ溢(あふ)れる人情料理帖。