日本人が知らない日本文化の本質をズバリ!
人気鑑定士が、疑問に答えます。
日本人はなぜ、「蔵さび」や壊れたものを愛でるのか。
「新品の茶碗はまだ未完成なんですよ。
見た目はきれいなんですけども
まだ美しいものになっていない」
本書の構成
一章 きれいなものと、美しいものの違いを教えてください。
長次郎、鎌倉の大仏、平家納経、銀座ライオンビヤホール……
二章 不完全の美、不足の美について教えてください。
雪月花、わび、さび、井戸茶碗、蔵さび、金継ぎ、破袋、涙痕……
三章 日本人の美意識がどのようにつくられてきたか、教えてください。
水、季節感、松、正倉院、備前長船、墨蹟、真行草、茶禅一味……
四章 日本の美の基本について教えてください。
寸法、間、育てる、茶釜、円空仏、等伯、志野……
五章 日本の美の多様性について教えてください。
写し、色鍋島、民藝、截金、摺仏、くらわんか、転用……
六章 感性を高めるには、何をすればいいんでしょうか。
富士山、目筋、雪峯……
不完全なものにも美を見いだす日本人
『徒然草(つれづれぐさ)』に「花は盛りに、月は隈(くま)なきをのみ見るものかは」なんて言葉があります。十六夜(いざよい)の月や三日月といった不完全なものに情趣を見いだすのが、やっぱり日本人なんですね。
では、満月には見向きもしないかといったら、そうではないんです。完全なものの美を知らなければ、不完全なものの美もわからないんであってね、「いい侘(わ)びだ」「崩れたような形がいい」とばかり言っているのは、やっぱり偏(かたよ)った見方だと思うんです。(本文「二章」より)