池澤夏樹=解説
すべてが過剰だった。だから、この伝記は無類におもしろい――
ケルアック
ビートジェネレーションを代表するアメリカの作家。フランス系カナダ移民の出身で、放浪と遍歴の生活を赤裸々に描いた。『オン・ザ・ロード/路上』が代表作。ヒッピーなどカウンターカルチャーの源流となる。
ケルアックにあってはすべてが過剰だった。まずは本人の知力とエネルギーの過剰。彼は聡明で、頭の回転が速く、知的好奇心にあふれて、おそろしく活動的だった。その上に美貌にも恵まれていた。次に友人たち。はっきり言ってどれも悪友であり、腐れ縁だ。その女たち。頻繁な短い恋愛の連鎖。そしてドラッグ。移動も多かった。最後に、文章の過剰があり、そこから生まれた過剰という原理に立った文体がある。
池澤夏樹
何かを追い求め、何かに追い立てられるような、めまぐるしい日々。
そうまでして新しい文学を目指して、遂に成功したのだろうか。
徹底して反市民的な、破滅的な生活からしか傑作は生まれないのか。
――タブーを突き破って駆け抜け、永遠の青春文学を紡いだ魂の軌跡。