井筒和幸=解説
人生の憤怒や悲しみを和らげてくれる、神でも君臨したような“芸能力”――
ジェームズ・ブラウン
「ファンクの帝王」と称えられるソウルシンガー。貧困黒人家庭出身で犯罪にも手を染めたが、天性のリズム感でポピュラーミュージックの時代を拓く。「ゲロッパ!」のシャウトで有名。葬儀にはマイケル・ジャクソンも駆けつけた。
偽モノでもいい、J・Bのように、ガッツとソウルさえ持続できれば、生きていけるのだ。サヴァンナ川の丸太小屋で生まれようとも、母が家を去ろうとも、靴磨きをしようとも、オーガスタの売春宿で育てられようとも、自動車のバッテリーを盗んで懲役刑を喰らおうとも、キング牧師が殺されて黒人居住区が蜂起しかけようとも、ブラック・パンサーの賛歌を吠えようとも、アフリカに戻ろうとも、動物用の麻酔薬にさえ蝕まれて警察とカーチェイスになろうとも、何があろうとも、だ。
井筒和幸
やっぱりこの世に女がいなければ、男はただのゴミで、虚栄で、無だ。
ジェームズ・ブラウンを抜きにして、今日のポップスもアメリカも語れない。
マイケル・ジャクソンにとってJ・Bは、インスピレーションの最大の源だった。
――熱さと喜びと苦痛を“芸能力”に変換した天性のショーマンの破天荒な人生。