鹿島茂=解説
臣民を愛するために生まれてきた、善良で民主的な王の悲劇――
ルイ16世
ルイ15世の孫で、ブルボン朝第5代のフランス国王。アメリカ独立戦争を支援し、内政改革を志したが挫折。三部会を召集した結果、1789年7月14日のバスティーユ襲撃に始まるフランス革命を呼び起こした。自ら設計に関わったギロチンにかけられ刑死。
元祖「革命輸出国」フランスでは、1793年1月にギロチンの露と消えたルイ16世の再評価機運がにわかに高まっている。著者が試みているのは、オセロ・ゲームのように、黒だったものを一気に白として反転させるスリリングなチャレンジである。
ルイ16世は「良き王」であるがゆえに躓いたのだ。ソフト・ランディングを好む王の「民主的な気質」が究極のハード・ランディングである大革命を引き起こす。むしろ、ルイ16世は民主的過ぎたがために殺されたのである。
鹿島茂
ギロチンの露と消えたルイ16世は、本当に愚鈍な人間といえるのだろうか?
マリー・アントワネットとのセックスレスの原因は、いったいどこにあったのか?
国王夫妻に対するイメージの決定的な転換は、どの時点で起きたのだろうか?
――民主的過ぎたがために殺された君主から見た、もう1つのフランス革命史。