菊地成孔＝解説
20世紀が消化できなかった、言わば食べ残しとも
呼べる成分が、フェリーニの代表作や、
エピソードの中から見いだされる――

フェリーニ
「映像の魔術師」の異名を持つイタリアの映画監督、脚本家。『道』『甘い生活』『8 1/2』など映画史に残る傑作、世界的なヒット作品で知られる。カンヌ国際映画祭パルムドール賞や4度のアカデミー賞外国語映画賞に輝く。妻は『道』のジェルソミーナ役で有名な女優、ジュリエッタ・マシーナ。

本書の主人公であるフェデリコ・フェリーニは言わば完璧な20世紀人であり、彼の素晴らしさ――大衆芸術に軸足を置きながら、映画の可能性を革新／拡張し続け、イタリア美術史にもイタリア風俗史にもその名を刻んだ、偉大さや人間性を、敢えて紋切り型に書けばこういった事になるでしょう。
「少年の夢と幻想、女性に翻弄される人生、カソリックとイタリアという問題と葛藤し続け、人生、歴史、記憶をサーカス的、肯定的に描いた映像の魔術師」 菊地成孔

現実にあったことよりも、自分で創作したことのほうが、ずっと本当のことだ。 びっくりさせたい、白状したい、自分を赦したいという思いや、気に入られたい、おどけたい……感動させたいといった、ずうずうしい欲求がごちゃ混ぜになって。――奔放にして一筋縄ではいかない彼の映画は、世界を異なって見せてくれる。