将軍の座をめぐる 吉宗の壮絶な暗闘
智将幸村の奇謀なるか
江戸城夏の陣、最後の天下分け目の戦い!
サムライを描き剣を描いては他の追随を許さない
時代小説の雄が放つ壮大なロマン
「幸運を待っているだけでは、何も得られぬぞ。紀州の吉宗どのを見るがいい。兄ふたりがいながら、いまは押しも押されもせぬ藩主ではないか」
継友はそう言って、一同に視線をまわした。細い目が刺すようにひかっている。継友は己の身を吉宗に重ねてみていたのである。
そのとき、座敷の隅に座していた五右衛門が、「一昨日、手の者が成瀬さまのお屋敷のちかくで、陰密らしき男を見かけました。紀州の忍びではないかと」と低い声で答えた。
「なに、紀州……」
継友は驚いたような顔をした。
…………本文より
野望、陰謀渦巻くなか、死闘の幕が静かに開いた……
徳川家宣、重篤!
六代将軍の急を知らせる報に吉宗が天下盗りに動いた。
紀州藩の奪取から七年、いままさに悲願の時がきたのだ――。
着々と家宣の後への礎を固める吉宗一派。
しかし、その前に立ちはだかる暗殺者集団・御土居下衆。
唸り迫る豪剣の激突、大気を破る手裏剣の嵐。
そして、冷徹な智略の応酬。
将軍の座をめぐる熾烈な暗闘の行方は!?
正徳二年、江戸城を舞台に、亡き真田幸村が描いていた、
最後の天下分け目の戦いが始まった。