落語好きにも、そうでないあなたにも。
笑いあり、涙ありの素人体当たり落語寄席、開演!
この私が、やれるのか。
人を笑わせられるのか?
吉田江利、三十三歳。独身OL。落語に挑戦しちゃいます。
知れば知るほど、落語が描く人間の物語は深く、怖く、温かい。わたしたちを取り巻く状況は常に厳(きび)しいものですが、落語頭があれば乗り切れると、わたしは信じているのです。
(著者あとがきより)
ギャグ? このわたしが、ギャグをやる?
やれるのか。人を笑わせられるのか。オヤジギャグで人をうんざりさせるアホ上司とは大違いの、ちゃんとした笑いをとれるのか。
寿限無(じゅげむ)、寿限無、五劫(ごこう)のすりきれ。
誰にも聞かれないよう台本の上にかがみこみ、江利は小声で繰り返した。(本文より)