“疵(きず)つく心と汚濁の街”警察小説、2008年の収穫。
内勤警官・小松一郎(こまついちろう)
連続猟奇殺人を追う
被害者の頭部を王冠のように飾りたてる殺人者
26年前の迷宮入り事件が北の都・弘前に蘇った――
「やつらはある種の優越感とともに、内勤の人間をデスク組と呼ぶ。社会の秩序を保っているのは自分たちであり、自分たちこそが本物のデカだと言いたいのだ。だが、各警察署の、いや、警察という組織そのものの秩序を保っているのが、連中がデスク組と軽蔑する人間たちである現実には決して目をむけたがらない。とはいえ、確かにここは刑事課の連中のテリトリーだ。なぜ自分がここに呼ばれたのか、理由を聞きたいのはこっちだった。」
(本文より)
「警察OBの越沼(こしぬま)が殺された。頭蓋骨が切断され、脳味噌に王冠のように釘を植えつけられて。それはかつて「キング」と呼ばれる殺人者が繰り返した、二十六年前の忌(い)まわしい迷宮入り事件の手口と同じだった――。
弘前(ひろさき)中央署会計課係長の小松一郎(こまついちろう)は、幼馴染(おさななじ)みの警視庁警視正・風間(かざま)によって、捜査の最前線に立たされる。少年時代二人はキングの被害者だったのだ。地元有力者を密(ひそ)かに容疑者と目(もく)する風間たち。だが、その追跡も空(むな)しく、猟奇殺人はさらに続く。そして、解決の鍵となる捜査資料が紛失した。署内に事件と関わりのある者がいるのか? 北の街を舞台に心の疵(きず)と正義の裏に澱(よど)む汚濁を描く、警察小説の傑作誕生!