琶子(わこ)が目覚めると、直前の記憶を喪失していた――。
わたしがママを殺した? 刺したのはわたし?
この疾走感・構成力・世界観。著者渾身のクライム恋愛小説
<わたしの母親、死んだ? 殺したのはわたし?>
わたしは混乱した。血まみれのママの姿がフラッシュバックしたのだ。刺身包丁を握った手の感覚、落とした際のぬるりとした感覚があざやかに甦る。夢なのか、現実だったのか、自信がなくなる。
(本文より)
ほんとうのわたしはどこにいる?
あんたが出会いたいあんたは、もっと奥の深みにいるんだ。浅瀬と深い海の間には、例えてみれば鉄の板のような仕切りがある。琶子ちゃんは、それを突き破るためにここにいる。
(本文より)