百万石のお家騒動が勃発(ぼっぱつ)
敵は最強の忍者軍団。閣老柳沢吉保(やなぎさわよしやす)の魔手、闇の豪商から悲劇の姫を守れ――
江戸の命を守るはぐれ者の群れ!
森村時代劇に驚異のヒーロー誕生!
「敵の肩腰しに心配そうに覗(のぞ)き込んでいる笛姫(ふえひめ)の姿がかすめた。刑部(ぎょうぶ)は愕然(がくぜん)とした。道場破りは刺客である。砦(とりで)化した長屋から誘い出し、刑部は真剣で封じ込めている間に、笛姫を斬る。
(謀(はか)られた)
とおもった瞬間、気合が迸(ほとばし)り、敵の真剣が風を巻いて打ち込まれた。絶対の自信を持った必殺の一撃である。
だが、髪一筋の差で刑部の鼻先をかすめたのみで、空(くう)を斬った。慣れぬ道場で間合いをわずかに見誤ったのである。真剣の驕(おご)りでもある。
この機を逃さず刑部の木刀が敵の真剣をはね上げ、低い姿勢から足を薙(な)いだ。木刀に手応(てごた)えがあり、道場破りが床に転がった」(本文より)
将軍徳川綱吉(とくがわつなよし)の治政下、「生類憐(しょうるいあわれ)みの令」に恨(うら)みを抱(いだ)く犬斬り浪人風影鋭一郎(ふかげえいいちろう)は本所深川(ほんじょふかがわ)の裏長屋に逃げ込んだ。そこは町道場の用心棒朽木刑部(くちきぎょうぶ)らの巣である、曲者揃(くせものぞろ)いの刺客長屋だった。折しも刑部は、恩人の和久半太夫(わくはんだゆう)から、永田(ながた)百万石のお家騒動に巻き込まれた笛姫(ふえひめ)を守ってほしいと頼まれる。藩乗っ取りを図(はか)る敵方の永田十忍(じゅうにん)が笛姫を抹殺(まっさつ)すべく襲撃を重ね、南町奉行所の切れ者同心村上主膳(むらかみしゅぜん)も長屋に渦巻く妖気に目をつけた。さらに、幕閣柳沢吉保(やなぎさわよしやす)を後ろ盾にする豪商山城屋も、長屋に魔手を……。三つ巴(どもえ)の暗闘の裏に隠されたものは何か? そして笛姫の行く末は? 江戸の命を守るはぐれ者たち! 森村時代劇の真骨頂!