歴史の闇に消えた“天才絵師”小田野直武をよみがえらせる偉業――
角館(かくのだて)の佐竹北家(さたけきたけ)に仕える小田野直武(おだのなおたけ)〔武助(ぶすけ)〕は、安永(あんえい)2〔1773〕年7月、本草(ほんぞう)学者にして山師・平賀源内(ひらがげんない)に画才を認められる。その時見せられた阿蘭陀〔オランダ〕絵の西洋画法に衝撃を受けた武助は、源内の誘いで江戸での蘭画修業を開始。浮世絵(うきよえ)師・吉次郎(きちじろう)〔鈴木春重(すずきはるしげ)〕らから刺激を受けながら画道に専念、やがて杉田玄白(すぎたげんぱく)らが翻訳(ほんやく)を目指す『解体新書』の附図描きの仕事を得る。それを機に、老中・田沼意次(たぬまおきつぐ)の知遇を得るようになっていくが……。後代の浮世絵にも多大な影響を与えた秋田蘭画の中心的絵師にして、平賀源内に愛された小田野直武。夭逝(ようせい)を遂(と)げた謎の絵師の生涯を活写した傑作歴史小説!