おとうちゃん
たっぷり愛してくれて
おおきに、ありがとう。
ラーメン屋「味よし」
店主のゲンコと看板娘センコ
どん詰まり下町商店街に息づく、
とびっきりの人情
そして、家族の物語
「ただいま」
「お帰りぃ」
馴染みのオッチャン、オバチャンが、「センコちゃん」「こんにちは」と声をかけてくれる。こういうとき千子は、足の下に太い根っこのようなものを感じるのだ。ここは、自分の町。自分が育まれた町。ちょっとやそっとの傷なんか、根っこが養分を吸い上げて、きっとすぐに治してくれる。
よく知った顔とその日暮らしの人間たちがひしめいて、98パーセントくらいがうさんくささで構成されている。残りの2パーセント程度がたぶん、温かさや懐かしさといった、なんだかちょっとよいものだ。(本文より)