彼はなぜ槍ヶ岳(やりがたけ)を目指したのか?
新たな歴史を刻む山岳ミステリーの傑作誕生!
ずぶの素人(しろうと)を北アルプスの峻峰(しゅんぽう)に登らせる―――。
奇妙な依頼を受けた男に仕組まれた危険な罠(わな)!
山を捨てた男の誇りと再生を賭(か)けた闘(たたか)いの行方(ゆくえ)は!?
『生還』『聖域』『凍雨』山岳ミステリーのトップランナー、最新作!
「原田(はらだ)さんは、山岳警備隊の所属なんですよね。しかし、この事件は管轄(かんかつ)違いでは?」
「いえ、私は警備隊の中でも特別な部署におりまして、いつも山の中を駆け回っております。山の中の機動隊みたいなものです」
「それは大変だ。所属は原田さん、お一人で?」
「いえ、直属の上司が一人。釜谷(かまたに)という者がおります。今回は応援ということで、私、一人が参りました」
「しかし……」そろそろこちらのカードも開くべき時だった。
「私は山田(やまだ)さんが山に行こうとしていたとは、思えない」