時代小説界期待の新星が描く、笑って泣ける人情噺(ばなし)!
贋(にせ)茶道具事件、夜の雪隠(せっちん)に出る“鬼”、吉原(なか)通いがやめられない若旦那の縁談…
頼みの綱は赤目勘兵衛(あかめかんべえ)、貧乏長屋で一番の怠(なま)け者(もの)だった!
飲んだくれ“先生”、獅子奮迅(ふんじん)!
まっくら店(だな)と馬鹿にされる貧乏長屋に住むお初(はつ)と、兄の太吉(たきち)。浅草(あさくさ)で小間物屋を営(いとな)んでいた両親が騙(だま)されて店を失い、悲嘆に暮れて亡(な)くなったのは2年前のこと。残された兄妹(きょうだい)は「必ず店を買い戻そう」と固く誓(ちか)いあっていた。
ひょんなことから太吉は、名品“井戸(いど)の茶碗”を入手する。だが、二十両の有り金をはたいたその茶道具は、真っ赤な贋物(にせもの)だった。弱り果てた兄妹に声をかけたのは隣りに住む浪人、赤目勘兵衛(あかめかんべえ)。我楽多(がらくた)茶碗を誰かに売ってやるという。日がな一日酒びたりの勘兵衛にどんな策が!? 貧乏比べじゃ人後に落ちない住人ばかり。取り得は店賃(たなちん)の安さだけ。芝神明(しばしんめい)の長屋を舞台に描く新世代の人情時代小説!