「ポロリ、ポロリと死んでゆく───」
失踪した記者が遺した中原中也の詩は何を語るのか。
防府、萩、長門、美祢、宇部……。
山口の闇をつなぐ“道”を名探偵・浅見光彦が奔(はし)る!
これはひょっとすると「世界初」で「世界唯一」のミステリーになるかもしれない。
山口県を舞台(ヤマグチ・クロス)に同時に発生した事件・物語が同時進行形で展開し、互いに干渉しあい、登場人物が錯綜(さくそう)しながら大団円に向かう。そしてそれぞれの事件それぞれの物語が独自に収斂(しゅうれん)する。僕自身、そんなことが可能なのかと疑いながら創作に没頭し、丸1年がかりで2つのミステリーが完成した。2つであって1つでもあるような不思議な小説世界を旅してみませんか。───内田康夫
敏腕記者・奥田伸二(おくだしんじ)が萩(はぎ)で失踪、捜索を依頼された浅見光彦(あさみみつひこ)は山口に飛んだ──。
姿を消す直前に奥田が口にした不穏な言葉。4年前に起こった市役所職員カップルの疑惑の死。そして、中原中也(なかはらちゅうや)の詩の一節が綴(つづ)られた遺書。不可解な事実の数々が浅見を翻弄(ほんろう)する。奥田の身に何があったのか? 同じ頃、見合いで山口を訪れていた浅見の親友・松田将明(まつだまさあき)は、元美祢(みね)市議刺殺事件に巻き込まれてしまう。松田から援軍を求められた浅見の前で、2つの事件が奇妙に絡み始める……。やがて浮上した謀略の構図、そして敵の影とは!?