しみじみとした風景の中に、胸を打つ言葉と物語が。
珠玉の最新作品集。
「人生とは──ああそれを一言で言えるくらいなら、誰も小説など書きはしない」
三年前に生まれ育った地方都市に戻って来た、作家でシンガーでもある竜二。猫のミーちゃんとふたり(?)暮らし、徒然に日々を送りながら生について、死について、思索をめぐらせる。社会の周縁から垣間見える、数々の人間ドラマ──。
しかし敢えて言ってみるなら、人生など、つまりは、死という港までの移動手段ではないか。どうせいつか下りる船ではないか。その船が向かっている港のことをこそ、もっと考えるべきではないのか。そして逆説的だが、そのいずれたどり着く港がわから目をこらして今日という日を見つめかえすことで、はじめて安心な乗り心地が得られるのではなかろうか。意味のある航海を送れるのではなかろうか。どうだろうか。(本書収録「A DAY」より)