相次ぐ死。危険な香りを纏(まと)う謎(なぞ)の男。許されぬ恋。
そんなに一途(いちず)になっちゃあいけねえよ。
こんなに苦しいのに、想わずにはいられない──
少女が大人の女性へ変わっていく季節を鮮烈に描く!
人を想うことは罪ですか──
本所深川六間堀町(ほんじょふかがわろっけんぼりまち)の太物(ふともの)問屋『あたご屋』の一人娘お八重(やえ)は17歳。母は亡くしたものの、父の重蔵(しげぞう)と祖母の久利(くり)、伯母のお竹(たけ)に加え、お付きとなった16歳の女中・おちかに囲まれ、幸せな日々を送っていた。だがある日、“川獺(かわうそ)”と名乗る男に出逢った瞬間(とき)から人生が一変する。初めての恋に落ちたのだ。そしてその日から、人生の日向(ひなた)しか知らなかったお八重の周りには、謎(なぞ)が、死が、災厄が忍び寄ってきた……。