何故、雪は、六花の形を成すのでしょうか。
万象の理(ことわり)が識(し)りたいと願った古河藩の下士・小松尚七。
政(まつりごと)のために蘭学を究めた重臣・鷹見泉石。
冬の日に出会った二人は幕末へ向かう時代に何を見たのか?
何と言われようと、考えることをやめようとしない。
それは何よりも貴(とうと)いことだ───。
冬の日、雪の結晶の形を調べていた下総古河藩(しもうさこがはん)の下士・小松尚七(こまつなおしち)は藩の重臣・鷹見忠常(たかみただつね)(のちの泉石(せんせき))に出会う。その探究心のせいで「何故なに尚七」と揶揄(やゆ)され、屈託を抱える尚七だったが、蘭学に造詣(ぞうけい)の深い忠常はこれを是とし、藩の世継ぎ・土井利位(どいとしつら)の御学問相手に抜擢(ばってき)した。やがて江戸に出た主従は、蘭医・大槻玄沢(おおつきげんたく)や大黒屋光太夫(だいこくやこうだゆう)、オランダ人医師・シーボルトらと交流するうちに、大きな時代の流れに呑み込まれていく……。