愛に飽和点はあるのだろうか。
恋をし、結婚し、子供を得た。
幸せとともに、言い知れぬ不安も生まれた。
東京からニース、ジェノヴァへ──。
見失った夫婦の絆(きずな)をさがす物語。
妻との見失った絆をさがして──
30半ばで娘を授(さず)かった西岡順一(にしおかじゅんいち)は、子供の誕生の喜びとは裏腹に、妻との関係がこのまま在(あ)り続けるのか不安を抱く。妻との距離をつかめなくなった矢先、意に沿わぬ人事異動の命が。アルコールに逃げる順一を、しかし、妻・由里子(ゆりこ)は静かに見守るだけだった。そんなある日、大学時代の恩師で娘の名付け親でもある大島(おおしま)危篤(きとく)の報が。二人は急遽(きゅうきょ)、教授夫妻の住むニースへ旅立った。夫人の勧めで二人はさらにジェノヴァへと向かう。旅の中で二人がたどり着いたものとは? 自分たちは人生の頂(いただき)に近づいているのか、頂を過ぎこれからは下っていくのか? 切なく胸に染み入る至高の恋愛小説。