高く、高く、力強く羽ばたけ。
遠く、遠く、見果てぬ明日へ――
初恋、友情、夢、仕事……。
上野不忍池(しのばずのいけ)にある花鳥茶屋に集(つど)う幼馴染みの若者たちが、それぞれの巣立ちに向かって懸命に生きる、瑞々(みずみず)しくて豊潤な傑作時代小説、ここに誕生!
いつの日か、いっとうお気に入りの鳥を飼うかごをこしらえたい
花鳥茶屋(かちょうぢゃや)「せせらぎ」は上野不忍池(うえのしのばずのいけ)に面したおよそ600坪の敷地に、珍しい鳥を集めた禽舎(きんしゃ)や植物を配した行楽の苑(その)であった。いかがわしさとは縁遠く、女子供にもたいそう受けがよい。子供のころ、手習いの師匠が語ってくれたさまざまな鳥の話に、足が痺(しび)れるのも忘れて幼馴染(おさななじ)みたちと聞き入った勝次(かつじ)は、ここ「せせらぎ」で鳥かご職人の修業中だった。弟子入りして5年、仲間も皆、巣立ちの時を迎えようとしていた……。