誰もが踊り狂ったバブルの果て、
友はなぜその手を汚した?
闇を追って、名車マスタングが唸(うな)りを上げる――
止まれって?
そりゃ無理だろ。
拉致(らち)、殺人、不正融資、政界の闇……
ハードボイルドの旗手が放つ渾身の犯罪サスペンス!
戦後文学となった犯罪小説〈ハードボイルド〉の到達点!
バブル崩壊で巨額の借金を背負い自動車修理工場で働く氏家豊(うじいえゆたか)は、67年型マスタングで東京を流していた夜、何者かに拉致(らち)された旧友五十嵐(いがらし)の娘香織(かおり)を救う。数日後、自(みずか)らも凶漢に襲われた氏家が事情を糺(ただ)すと、五十嵐は勤務先の銀行で不正融資を強(し)いられたと告げ、姿を消した。赤坂(あかさか)の料亭女将(おかみ)でマスタングの持ち主、澄子(すみこ)にまで不審な影が近づいたことで、氏家は事態の背後を洗い始める。直後、借金を肩代わりしてくれた恩人富沢(とみざわ)が殺され、さらに富沢と五十嵐の接点が浮上。その上、なぜか銀行不正に関わる口座が氏家の亡父名義で作られていた――。宴が残した闇の中を、事件の真相を追う氏家がノンストップで疾走する!