掛け値なしの面白さ
著者初の現代ミステリー
予期せぬ事態が
心の奥底に潜(ひそ)んでいた
思いを炙(あぶ)り出す。
時代小説の名手が、
不可思議な心のさまを描き切った、
この上なく豊潤(ほうじゅん)な作品集。
愛、友情、機知、毒……
摩訶(まか)不思議な人間の心の奥底を描く、
極上のエンターテインメント
ひと仕事終えたある日の午後、装丁(そうてい)家の高倉俊介(たかくらしゅんすけ)の元に、使用した形跡のある黒革張りの日記帳が届いた。それはバイク事故で他界した、叔父(おじ)であり仕事の師でもある尚平(しょうへい)のものだった。しかも日記は事故死した当日で終わっていた。事故の真相への興味と、真実を知る恐怖を感じながらも頁(ページ)を繰(く)る俊介。だが、そこに綴(つづ)られていたのは、親友のカメラマン小柳(こやなぎ)の恋人Mへの恋情だった。還暦も近い男たちが、四十年来の親友との絆(きずな)を断ち切るほどの背信を重ねていたことに、深いやるせなさを感じる俊介。やがて、俊介は日記を手に小柳を訪ねるが……。(「晩秋の陰画(ネガフィルム)より」