かつて許されぬ愛に溺(おぼ)れた二人。
シェイクスピアの翻案(ほんあん)で名を成した世界的劇作家が、
30年ぶりの新作『R/J』とともに姿を消した。
戯曲に隠されたものは、愛ゆえの絶叫か、憎しみの慟哭(どうこく)か?
「女」は今も愛を求め、「男」は破滅を恐れた――
輝かしい経歴から消された、冷戦と演劇に翻弄(ほんろう)された過去とは?
気鋭の劇作家内藤岳(ないとうがく)は、知己(ちき)を得た世界的劇作家ヘルムート・ギジに師事するため、ドイツに渡った。ギジは冷戦時代、旧東ドイツで体制を批判するシェイクスピアの翻案(ほんあん)作品で名を馳(は)せていた。その彼が、30年ぶりに『ロミオとジュリエット』の翻案『R/J』を執筆中というニュースは世界を驚かせ、原作と翻案が同時上演されることに。だが、新作の完成を待つ中で進む原作舞台の稽古(けいこ)中、女優が重傷を負う事故が発生。直後、ギジが新作原稿とともに姿を消した。岳はルームメイトで演劇研究家の桐山準(きりやまじゅん)と協力、ギジの足跡を辿(たど)り、やがて彼の経歴から消された闇を知ることに…。