呑んでも呑まれるな
とは言うけれど、
呑むにまかせる夜もある。
時に後悔の朝を迎えても、
それでもやっぱり酒が好き…
凝(こ)った心をときほぐす、
呑まずに酔える
傑作時代小説!
盃(さかずき)を重ねるほどにほろりとさせる――人情酒屋で、どうぞ一献!
酒屋の跡継(あとつ)ぎとして、酒のせいで悩んでいる人に手を貸したい。幹之助(みきのすけ)がそう言い出したとき、親はもちろん奉公人まで目を丸くした。……酒屋の主人になるのなら、酒の功罪を知っておきたい。並木町(なみきちょう)の七福(しちふく)は酒を売りつけるだけではない、のちの事まで気を配ると世間の人が思ってくれれば、客がさらに増えるはずだ――もっともらしい言葉を連(つら)ねて、渋る父を説(と)き伏せた。それから2年、さまざまな相談が幹之助のもとに持ち込まれた。(本文より)