この物語だけは、
書いておきたかった。
焦土と化した
東京で出会い、
戦後を生き抜いた両親。
二人は何を見て、いかなる人生を歩んできたのか。
戦前・戦後から平成へ。
百年史を辿(たど)った先に小説家がたぐり寄せた、
はかなくも確かな一条の光。
戦争に翻弄(ほんろう)されつつも、
数奇な運命に導かれ、
鮮やかに輝いた青春があった――
東京大空襲からわずか3週間後の昭和20年4月1日。
上京した14歳の美代子(みよこ)は、新宿の看護婦養成所に入学した。「お国のために働きたい」と勉学に励む美代子だったが、激化する空襲に、現場はたちまち野戦病院と化していく。同じ頃、23歳の隆作(りゅうさく)は、通信兵として大陸を転戦していた。だが、壮絶な行軍の末、体調に異変を来(きた)してしまう……。