地味な市議の死。
外傷や嘔吐(おうと)物は一切なし。
医師の診断も心不全。
なんとか殺人に格上げできないものか。
本庁への栄転を目論(もくろ)む
卯月枝衣子(うづきえいこ)警部補29歳。
彼女の出来心が、“事件性なし”の
孕(はら)む闇を暴く!?
軽妙に、見事に、
人間の業(ごう)の深さに迫る
新感覚ミステリー!
「ねえ課長、ついでに一週間だけ、
わたしに調べさせてもらえませんか」
東京・国分寺(こくぶんじ)市の閑静(かんせい)な住宅街で、初老の男が死んだ。かつては存在感の薄い中学教師で、先の選挙で急遽(きゅうきょ)担(かつ)がれただけの市会議員。キャッチフレーズは「国分寺から革命を!」。現場に不審な点はなく、しいて言えば座布団(ざぶとん)がきれいに並びすぎていたくらい。医師の診断も急性心不全だった。所轄(しょかつ)での退屈な日々に飽(あ)きていた卯月枝衣子警部補は、あわよくば本庁捜査一課へ栄転の足がかりにと、昼行灯(ひるあんどん)の刑事課長を言いくるめ、強引に単独捜査に乗り出すが……。