北の核・ミサイル実験が続き、米国大統領選挙が行われた二〇十六年十二月、首相の地元・山口長門(ながと)での日露首脳会談で返還交渉は解決するはずだった。それが一転、突如暗礁(あんしょう)に乗り上げた──
今、「国防」とは?
元幹部自衛官の著者が、インテリジェンスというもう一つの戦闘≠描く!
「北方領土におけるロシアの完全な主権を“戦勝国”が認めるだろう」
───ロシア大統領 ウラジミール・プーチン(2016年11月20日 リマでの首脳会談に於いて)
二〇十六年十二月、北方領土問題は解決すると予想されていた。日露首脳会談の地を、首相の地元・山口県長門市としたのが、解決≠歴史に刻む用意であったことは想像にかたくない。しかし、先立つこと一カ月、ペルーの首都リマでの首脳会談を経て、首相、政府関係者の発言は急激にトーンダウンする。そして長門では、経済協力を宣言したものの、領土交渉に関してはなんら進展なしという結果に終わった。これは、専門家でさえ首をかしげる不可解な経過だった。本作は、当時、水面下で何が起こっていたのかについて、一外交書記官の目を通し、ワールドワイドな<インテリジェンス>という、もう一つの戦闘≠ノ肉迫せんと試みた小説である。
著者