彼女をそこから出してはいけないーー
老夫婦惨殺現場で保護された身元不明の少女
十九年前、ダムに沈んだ町を精密に描く天才画家
その絵に魅入られる女性フリーライター
三人が出会うとき、開くはずのなかった扉が開く
あの子はいったい何者?
老夫婦が若い青年によって惨殺される事件が発生、その家から身元不明の少女が
見つかった。その少女は「ツキノネ」と名乗る有名な動画配信者だという。
少女は折原弥生(やよい)と名付けられ、児童養護施設に引き取られることに。
一方、フリーライターの大塚文乃(あやの)は画家・荒木一夫のルポを書くため、
彼の個展に来ていた。荒木は十九年前にダムに沈んだ故郷・小階町(こかいちょう)を精密に
再現した絵を描くことで注目されていた。
荒木の絵に見入る文乃。その時、いるはずのない少女が、突如絵の中に現れ、文乃は気を
失ってしまう。
後日、小階町の歴史を調べた文乃は、そこに「根ノ教」という土着宗教があり、その神が
「ツキノネ」と呼ばれていたことを知る。