作家生活20周年記念作品
幕末の土佐に生まれ「絵金」と呼ばれた、艶やかな色彩で見る者を
虜にした異才、激動の生涯。
「血の色は厄払いじゃ。万民の不安を払い落とすのじゃ」
幕末の動乱は土佐国も大きなうねりで呑み込んだ。
様々な思想と身分の差から生じる軋轢(あつれき)は、人々の命を
奪っていった。
金蔵はそんな時代に貧しい髪結いの家に生まれた。
類まれなる絵の才能を認められ、江戸で狩野派に学び「林洞意美高」(はやしとういよしたか)
の名を授かり凱旋。国元絵師tなる。
しかし時代は金蔵を翻弄する。人々に「絵金」(えきん)と親しまれながらも、
冤罪による投獄、弟子の武市半平太(たけちはんぺいた)の切腹、そして、
土佐を襲う大地震……。金蔵は絵師として人々の幸せをいかに描くかに
懊悩(おうのう)する。やがて、絵金が辿り着いた平和を願う究極の表現とはーーー。