大ヒット「風の市兵衛」の著者の新たなる代表作!
日当わずか八十文。関八州取締出役の艱難辛苦の旅の一年を、郷愁豊かに描く!
己が命、武士の矜持のみに賭す
我々が農村の治安と繁栄を、ひたすらに歩いて愚直に守る。
越後宇潟藩の竹本長吉は上役の罪に連座し失職、故郷に妻子を残して
江戸に仕事を求めてきた。様々な職の中、請人宿で選んだのは<雇足軽>だった。
関八州取締出役の蕪木鉄乃助の元、数名で一年をかけて関東の農村を巡回し
治安を維持する、勘定所の臨時雇いである。
日当わずか八十文。二八蕎麦が十六文、鰻飯なら二百文が相場だった。
討捨ても御免だが、刀を抜くことは珍しい。多くは無宿の改め、博奕や喧嘩、
風俗の取り締まり、農間渡世の実情調査や指導などの地道なものだった。
巡る季節のなか、土地土地で老若男女の心の裡に触れる長吉は、
妻子あ想い己が運命と葛藤する。そんな時、残忍非道な押し込み強盗の
捕縛を命じられーーときに鬼神と化し、ときに仏の慈悲を施す八州廻りを、
郷愁豊かに描く!
関八州とは、上総、下総、安房、常陸、下野、上野、武蔵、相模の八州のことである。