劇評家・渡辺保初の自伝的エッセイ
劇評家、渡辺保さんが幼少時代からどのように歌舞伎と接してきたのか。
歌舞伎エンターテインメント誌、月刊『演劇界』で連載されていた、著者初の自伝的エッセイが一冊の本になりました。
歌舞伎を見始めた初心者からも、何十年と見続けている上級者からも絶大な信頼を得ている渡辺保さん。
十五代目市村羽左衛門、六代目尾上菊五郎にはじまり、片岡仁左衛門、坂東玉三郎などの人気歌舞伎俳優論や東宝での製作担当時代の秘話、劇評家デビューにも触れた興味深い内容です。
「昭和十六年十二月の歌舞伎座、六代目菊五郎が演じた狐と少女と坊主。その強烈な変身と官能的な華やかさが、わずか六歳だった私の人生を変えた」(文中より)とあるように、現在の「渡辺保」はいかに形作られたのか、その軌跡をたどる歌舞伎ファン待望の内容となっています。
また、「舞台を見る眼の養い方は?」などの質問に答えた「三十問三十答」も同時に収録。
歌舞伎観劇上級者だけではなく、初めて歌舞伎を見る初心者にも親しみやすい一冊となることでしょう。
とかく難しいと思われがちな歌舞伎ですが、読み終えた後はきっと歌舞伎を見るヒントがつかめ、より深く舞台が楽しめるはずです。