ビザンティン帝国を中心に、東方世界に見る中世キリスト教美術の集大成
4世紀前半、ローマ皇帝コンスタンティヌスが造った帝国の新しい都は、皇帝の名にちなんでコンスタンティノポリスと名づけられる。アジアとヨーロッパを結ぶその地は古代ギリシア以来ビザンティオンと呼ばれていた。「ビザンティン帝国」の由来である。 史上初のキリスト教国家となったこの帝国は、キリスト教教義ばかりでなく、美術表現のうえでも西欧とは異なる、独特の様式を展開する。壮麗なアギア・ソフィア大聖堂、まばゆいばかりのラヴェンナのモザイクには宗教と国家権力の統合を見るだろう。「神の姿」を写すことをひたすらに願ったフレスコ画は、近代の遠近法とは無縁の技法で聖なる世界を具現する。礼拝のための聖画像、イコンはときに願いをかけ、抱きしめる対象でもある。修道士たちの祈りの生活が営まれていたエジプトのシナイ山、トルコのカッパドキア、ギリシアの聖山アトス、メテオラも忘れてはならない。また、ビザンティン美術の拡張として、スラヴ諸国やアルメニア、グルジアを網羅し、ロシアの中世美術も取り上げる。 千年の都はオスマン・トルコによって歴史を閉じるが、その豊かな美術遺産を日本で初めて集大成した、まさに本シリーズの棹尾を飾るにふさわしい一冊である。
<シリーズ説明>● 先史時代から現代まで、3万年にわたる人類の美の歴史を見通す時代別編集。● 作品の素晴らしさを忠実に再現するため、世界の第一線美術写真家による新規撮影をおこない、さらに現地での色校正を実施。● 従来取材が困難だった旧ソビエト連邦、東欧圏をはじめ、世界各地の個人所蔵作品までを含む、70余国、1000か所以上という史上最大の規模で取材を展開● ルネサンス期絵画やベラスケス、レンブラントなどの作品を中心に、各地でおこなわれている作品修復作業のめざましい成果を反映。● 絵画、彫刻、工芸品、そして建造物まで14000点に及ぶ第一の美術遺産をジャンル別に構成。2800名の収録作家のうち、主要作家60名の作品については、個人全集に匹敵する数の作品を紹介。● 執筆陣は200名以上。美術、歴史学界をはじめ、今日考えうる各界最高の英知を結集して世界に問う美術全集です。● 作品の美しさを半永久的に保つため、最新の印刷技術、中性紙の使用などにより高度な再現性と保存性を実現。(1)先史美術と中南米美術(2)エジプト美術(3)エーゲ海とギリシア・アルカイック(4)ギリシア・クラシックとヘレニズム(5)古代地中海とローマ(6)ビザンティン美術(7)西欧初期中世の美術(8)ロマネスク(9)ゴシック1(10)ゴシック2(11)イタリア・ルネサンス1(12)イタリア・ルネサンス2(13)イタリア・ルネサンス3(14)北方ルネサンス(15)マニエリスム(16)バロック1(17)バロック2(18)ロココ(19)新古典主義と革命期美術(20)ロマン主義(21)レアリスム(22)印象派時代(23)後期印象派時代(24)世紀末と象徴主義(25)フォーヴィスムとエコール・ド・パリ(26)表現主義と社会派(27)ダダとシュルレアリスム(28)キュビスムと抽象美術